女性は格下男性に、男性は格上女性に目を向ける

2019/12/02

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婚活をしている30代以上の男性・女性の間に「もう結婚できないかもしれない……」という、諦めに似た空気が漂うこともしばしば。そんなムードを打破するために、何をすればいいでしょうか? 最終回の今回は、結婚や家族について、歴史社会学の視点から研究する東京大学大学院教授・赤川学先生にアドバイスいただきました。

婚活は就活と似ており「数を打つ」視点も大切

――この連載の1回目で、なぜ結婚が困難になったか、2回目で、他国に比べ日本人が恋愛において受け身だということを、社会学のデータとともに解説いただきました。今回は、婚活中の男性・女性に具体的なアドバイスをお願いします。

「まず、みなさんに助言をするなら、『失敗を恐れない方がいい』ということかもしれません。婚活も就職活動と似ており、経験を積んだ人……つまり数を打った人が、成果をつかむ傾向があります」(「」内 赤川先生・以下同)

――つまり、条件が合わないとか、好みじゃないなど、事前情報で“対象外”とするのではなく、実際に会ってみることが大切ということでしょうか。

「はいそうです。多くの人に会わなければ、理想ではなく現実的な自分の好みもわかりにくいですよね。また、生身の人と会わないことには、自分が結婚して、どんな人生を歩みたいのかも見えづらいと思います。あとは、すべてうまくいくと思わないこと。就活も婚活も、人生でたった一勝すればいいんです。人は成功している人を見て、うらやましがる部分がありますが、一勝した人の裏には、100敗があることが多い。経験を積まないとわからない部分があるわけです」

――赤川先生が、就活が希望通りに進まない学生に、「100敗してもいい」と助言すると「もう、うんざりなんです」と答える人も少なくない、と続けます。

「例えば、面接のたびに『ウチの会社に入ってやりたいことはなんですか?』と聞かれます。同じ質問ばかりで“うんざり”するかもしれません。しかし、面接担当官は、学生が何をしたいかを知りたいのではなく、その人の対応力やコミュニケーション能力を見ています。
これは婚活も似ています。新しい人に出会うたびに、似たようなやり取りを繰り返して、互いを観察し合います。出身地や趣味などの一般的な質問から、“この人は自分に合うか・合わないか”を判断していきます。その結果、自分に合う人を見つける。会話を続けることが大切なのです」

――会話を通じて“肌が合う”かどうかを判断するのが婚活かもしれません。30代以降で婚活に成功した人が何をしていたか聞くと、複数の人に会った後に自分に合うと思う人に絞り込み、関係を深める中で「心地よい」と感じたら結婚を考えていく人が多数派でした。
そこで、多くの人が悩むのは、会話が続かないということ。婚活中の人が、会話を続ける上で、気を付けることをお聞かせください。

「これはあくまで個人的な意見なのですが、なるべく相手の話題にを拾うようにすると、会話は続きやすくなります。あとは相手の話を最後まで傾聴した上で、自分をなるべく出すようにするといいかもしれません。とはいえ、これはなかなか高度な技術が必要です。なぜなら、20~30代の前半は、異性とのコミュニケーションに、性欲という動機がないといえば嘘になるでしょう。個人差はあるとは思いますが、30代半ばを過ぎると、性欲は少なくなる人が多いように感じます。性欲が少なくなっているのに、相手と関係を深めることは、難しいことですが、大切なことだと感じます。」

――人に好意を持ち、関係を深めるにはエネルギーが必要。生涯未婚率(50歳時未婚率)が上昇(※)していることは、結婚が恋愛とセットで考えられていることを指摘する人も多いです。

「2回目でもお話しましたが、もともと、ほおっておいても恋愛ができる人は、全体の約3割です。皆が結婚できた時代だった1980年代くらいまでは、親戚や地域や会社にお見合いをあっせんする、世話好きな人がいました。だから、恋愛をせずとも結婚をするという選択肢がありえました。あとは、独身のまま生きていく人が少なく、社会が夫婦や家族単位で成立していました。年齢を重ねた単身者は家を借りにくいという問題もありましたし、なんだかんだいって、カップル単位での行動が求められるのが世界標準です。しかし、2000年代の半ばから、“おひとり様”需要に応えるマーケットが生まれ、独身の人が生きやすい社会になっています」

――結婚し、他人と暮らすにはストレスが伴います。しかし、その一方でそれでも誰かと共に生きる安心感や、一緒に喜ぶ相手がいることは、人生を豊かにすると感じる人が多いから、婚活中の人も増え続けているのだと感じます。最後に、結婚したいけれどできない……そう考える人にアドバイスをお願いいたします。

「女性は自分より学歴や収入が下の人を、結婚の対象として考えることでしょうか。男性は、自分よりもハイスペックな女性を結婚の対象とすると、いいかもしれません」

――大切なのは、社会通念や常識にとらわれず、自分の幸せを追求し、効率よく婚活をすることなのかもしれません。

文/前川亜紀 写真/廣江雅美

※国勢調査によると、50歳まで結婚したことがない人は、1990年には男性5.6%、女性4.3%だったが、2015年の国勢調査では男性23.4%、女性の14.1%と男女ともに約4倍になっている。

赤川学先生

プロフィール

東京大学大学院教授 赤川学先生

1967年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科社会学専攻博士課程修了。博士(社会学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授。社会問題、セクシュアリティ、少子化問題、歴史社会学などを研究。著書に『子どもが減って何が悪いか!』(ちくま新書)、『明治の「性典」を作った男: 謎の医学者・千葉繁を追う』(筑摩選書)、『セクシュアリティの歴史社会学』(勁草書房)、『社会問題の社会学』(弘文堂)など多数。

過去記事一覧

第1回目 「普通」の基準が爆騰している日本の結婚事情
第2回目 日本男性は、草食化していない